症状学/ドクターショッピングとファントムバイト症候群

20081127/症状学/ドクターショッピングとファントムバイト症候群:ドクターショッピングとは患者さんがよりよい医療を求めて、まるで自分の気に入った商品を探してあちこちの店を探し回るように、病院を転々とすることを言う。医療の中では、すでに適切な医療にたどりついているにもかかわらず、その治療に不満をもって新しい治療を探し求めるとでもいえるような比較的悪い意味に、言い換えれば患者さんの心理面の問題を表現する言葉として用いることが多い。しかし現場の臨床で、ドクターショッピングしているかのようにみえる方から詳しく話を伺うと、この治療であれば新たな治療を求めるのも当然であると納得できることが少なくない。この場合、ドクターショッピングは患者さんよりも医療側の問題を反映する用語となる。歯科口腔外科領域にファントムバイト症候群(phantom bite syndrome)という用語がある。Phantomとは医学では「実体の無い、幻の」のような意味で時に用いられ、biteとは「噛むこと」である。ファントムバイト症候群とは義歯を作るなどの歯の治療をいくら受けても、自分でよいと思えるかみ合わせがえられず、次々に歯科を転々とし、義歯の作成などあたらしい歯科治療を求める状態をいう。これも過去の歯科治療が適切であると思える場合と、すでに実施されている歯科治療自体が不適切であり、新たな治療を探し求める患者さんの行動は極めて適切と思える場合があるが、「○○症候群」というと、いかにも患者さんの中に問題があるかのように理解されやすい。
 医学用語として用いられる可能性のある言葉は慎重に定義することが必要である。ドクターショッピングとファントムバイト症候群という言葉ばかり頭にあると、目の前の事態をその言葉を鍵としてみていくことになり、それによって医療自体の問題がかえってみえにくくなることがある。どちらの言葉も、もし医療スタッフの頭に浮かんだら、医療自体の問題ではないかと再考するきっかけにすべきと思う。
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Miyaoka Hitoshi, MD., PhD.

Author:Miyaoka Hitoshi, MD., PhD.
北里大学医学部精神科
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